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「近くに同じ診療科のクリニックが新しく開業した」「以前より患者数が減ってきた気がする」「競合に患者が流れているようで、このままでは経営が不安だ」──近年、クリニック経営者からこうした声が急増しています。
競合クリニックの増加は、多くの院長にとって避けられない現実です。しかし、適切な対策を講じることで、競合が増えた後も選ばれ続けるクリニックになることは十分に可能です。本記事では、競合が増えた時に真っ先にすべきアクション・競合分析の具体的な手法・差別化戦略の設計方法・診療科別の対応策まで、体系的に解説します。
厚生労働省の医療施設調査によると、日本の無床診療所(クリニック)数は2024年時点で約10万件に達しており、年々増加傾向が続いています。特に都市部や交通利便性の高いエリアでは、新規クリニックの開業が続いており、「地域飽和」と呼ばれる状態──一定の商圏に必要以上のクリニックが集中する状況──が各地で発生しています。新規クリニックが増える背景として、①医師の高齢化に伴う勤務医から開業医へのシフト、②近年の開業コスト低下(居抜き物件・医療モールの増加)、③医療法人の分院展開、④若手医師の開業志向の高まりなどが挙げられます。
競合クリニックが増えると、①既存患者の転院──「あの新しいクリニックが便利そう」という理由で、既存患者が競合に流れるケースが増えます。②新患の取り合い──地域の新規患者が競合に流れ、自院への流入が減少します。③Googleマップでの露出低下──競合が口コミを積み上げていくにつれ、自院の相対的な評価が下がり、検索上位から外れていきます。競合の影響は「気づかないうちにじわじわと進む」という特徴があり、3〜6か月かけてゆっくりと患者数が減少するため、早期の対策が重要です。
競合増加に対して何も手を打たないでいると、患者数の減少→収益の悪化→広告費・投資の削減→さらなる患者減少という「負のスパイラル」に入るリスクがあります。「良い診療を提供していれば選ばれる」という受動的な経営では、競合増加時代に生き残ることが難しくなっています。競合が増えた事実を早期に認識し、迅速に対策を講じることが、安定したクリニック経営の維持につながります。
💡 重要ポイント
競合が増えた時に最も危険なのは「様子を見る」という姿勢です。競合への患者流出は3〜6か月かけてじわじわ進むため、「まだ大丈夫」という感覚が対策の遅れにつながります。競合開業の情報を掴んだ段階で、すぐに現状確認と対策立案を始めることが重要です。
最初のアクションは「現状の数値確認」です。確認すべき指標として、①直近3か月の月間患者数(前年同月比・前期比)、②新患数の推移(既存患者と新患の割合の変化)、③Googleマップの口コミ件数と平均評価の推移、④ホームページのアクセス数・問い合わせ数の変化、⑤月間売上の前年同月比変化、の5点を最優先で確認してください。数値の変化を確認することで、「まだ影響は出ていない(予防的対策が必要)」なのか「すでに患者数が減少している(緊急対策が必要)」なのかを正確に判断できます。
競合の実態を正確に把握することが、有効な対策の前提になります。調査対象は「新規開業した競合」だけでなく、「既存の競合で最近勢いが増しているクリニック」も含めて調査します。調査内容として、①診療科目・標榜科目の一覧、②診療時間・休診日(平日夜間・土日対応の有無)、③Google口コミの件数・評価・内容(何が評価されているか・何が不満か)、④ホームページの情報充実度・デザイン・訴求内容、⑤GoogleマップのMEO順位を調査します。
競合調査の結果を踏まえ、自院の「選ばれる理由」を再定義します。患者の目線から見た「選ぶ理由」に翻訳することが重要です。差別化ポイントの言語化の例として、「内視鏡検査が得意」→「経験豊富な消化器専門医が丁寧に説明。仕事帰りの18時以降も受診可能な胃カメラクリニック」という表現に変換することで、患者がどんなベネフィットを得られるかが明確になります。この言語化した強みを、ホームページ・GoogleマップのGBP投稿・SNS・チラシなど全てのチャネルで一貫して発信することが、差別化の第一歩です。
| アクション | 確認・調査内容 | 目的 |
|---|---|---|
| ①現状把握 | 患者数・新患数・売上・口コミの前年同月比変化 | 競合の影響の深刻度を数値で把握する |
| ②競合分析 | 競合の診療時間・科目・口コミ・HP・MEO順位 | 競合の強み・弱みと自院の差別化チャンスを特定する |
| ③強み再定義 | 患者目線での「選ばれる理由」の言語化 | 差別化ポイントを全チャネルで発信する基盤を作る |
競合が増えた際にまず取り組むべき自院・競合・患者の分析フレームワークについては以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。
クリニックの3C分析完全ガイド|Customer・Competitor・Companyで集患力を高める経営戦略の立て方
「地域名+診療科名」でGoogle検索し、Googleマップに表示されるクリニック(特にローカルパックの上位3件)を確認します。各競合の口コミを詳しく読み込むことで、「患者が何を評価しているか(強み)」「患者が何に不満を感じているか(弱み)」が把握できます。競合の低評価口コミは、自院が差別化できるポイントを示しています。「競合は予約が取りにくい」という口コミが多ければ、自院でWeb予約・LINE予約を整備することが有効な差別化策になります。
競合のホームページ・Instagram・X(旧Twitter)などのSNSを確認することで、競合がどのような患者層・訴求ポイントで集患しているかが把握できます。確認すべき項目として、①HP上の診療内容・自由診療メニューの有無・料金掲載の状況、②院長プロフィール(専門資格・専門分野・診療方針)、③院内写真(待合室・診察室・設備の充実度)、④SNSでの情報発信内容(何を訴求しているか)、⑤Webサイトのモバイル対応・表示速度・予約導線の使いやすさ、を確認します。
競合を一覧で比較できる「競合分析シート」を作成することが、戦略立案に非常に有効です。診療時間・土曜診療・Web予約の有無・Googleマップ評価・診療科目数・自由診療の有無などを各競合について一覧化します。この比較表から「競合に対して自院が勝っている点」「競合に対して自院が負けている点」が一目でわかります。競合に負けている項目から改善優先度を決定し、自院が勝っている項目を積極的に発信することが、競合対策の基本戦略です。
「何でも診る一般内科」より「○○に特化した専門クリニック」の方が選ばれやすい時代です。特定の疾患(生活習慣病・甲状腺・消化器・アレルギーなど)や診療内容(内視鏡・健康診断・禁煙外来・睡眠外来など)に特化することで、競合との明確な差別化ができます。院長の専門資格・出身医局・学会所属などをホームページ・GBPで積極的に発信し、「この分野なら○○クリニック」という認知を作ることが専門性差別化の核心です。
競合分析の結果、競合よりも診療時間が短い・予約しにくいという状況であれば、利便性の改善が最優先です。具体的には、①平日夜間(18〜20時)診療への延長、②土曜・日曜診療の充実、③Web予約・LINE予約の24時間対応、④Web問診の導入が有効です。競合よりも「通いやすい・予約しやすい」環境を整えることで、利便性での差別化が実現します。
Googleの口コミで評価の高いクリニックには、「先生の説明がわかりやすい」「スタッフの対応が丁寧」「待ち時間が少ない」「院内が清潔で居心地よい」という共通点があります。スタッフ研修による接遇レベルの向上・予約システムによる待ち時間短縮・院内環境の整備(清潔感・BGM・雑誌・Wi-Fi等)に投資することが、口コミ評価の向上→新患増加というプラスのサイクルを生み出します。
競合が増えた状況で最も防衛力が高いのが「かかりつけ患者の強固な関係性」です。①次回予約の来院当日提案の習慣化、②LINEやメールでの定期的なリマインド・健康情報配信、③家族全員が通えるかかりつけ機能の整備、④慢性疾患管理での継続来院の仕組みづくりが有効です。リピーター患者は広告費をかけずに来院し続ける「資産」であり、競合増加時代の安定経営の核となります。
地域の競合が提供していない自由診療メニュー(健康診断・AGA・睡眠外来・栄養指導・ダイエット外来・エイジングケア等)を導入することで、競合と異なる患者層を獲得できます。自由診療の導入前には必ず競合分析(近隣クリニックが提供していないニッチ領域の特定)と医療広告ガイドラインへの準拠確認が必要です。
競合に模倣されない差別化軸の設計方法については以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。
自由診療クリニックの差別化戦略完全ガイド|競合に模倣されない「選ばれる理由」の設計
MEO対策の具体的な施策として、①Googleビジネスプロフィール(GBP)の基本情報を最新状態に保つ、②院内写真を充実させる(外観・待合室・診察室・院長写真を10枚以上)、③週1〜2回の投稿更新(健康情報・季節の注意事項・新メニュー)、④患者からの口コミ獲得の仕組みを院内に整える(QRコードを使った依頼・LINEでの誘導)、⑤全ての口コミに誠実な返信を行う、が基本施策です。
ホームページの改善優先項目として、①院長プロフィールページの充実(専門資格・診療方針・経歴を詳しく)、②競合との差別化ポイントを分かりやすく記載したトップページの刷新、③「地域名+症状名」「地域名+診療科名」でのSEO対策(コラム・ブログ記事の充実)、④スマートフォン対応・表示速度の改善(3秒以内の表示を目標)、⑤Web予約・LINE予約ボタンをファーストビューに配置する、が挙げられます。
LINE公式アカウントを活用して、①定期的な健康情報の配信(季節疾患・予防接種の時期案内等)、②診察後のフォローアップメッセージ、③次回予約の促進(インフルエンザワクチン・定期健診等)を行うことで、患者との接触頻度を高めて「かかりつけ感」を醸成します。SNS(Instagram・X)では院長が専門分野の情報を継続発信することで、「この分野の専門家」というブランドを構築できます。
競合増加時代に効果を発揮するWebマーケティングの全体設計については以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。
自由診療クリニックのWebマーケティング完全ガイド|集患エンジンの設計・施策実装・効果測定まで一気通貫で解説
内科・小児科は地域密着性が高く、「かかりつけ医」としての患者定着が競合対策の核心です。内科系では、①慢性疾患管理(糖尿病・高血圧・脂質異常症)の患者の定着強化、②在宅医療・オンライン診療への対応、③地域包括診療加算の算定、④健康診断・予防接種(自由診療収益源として)が有効です。小児科では、定期予防接種のリマインド・乳幼児健診の充実・子育て情報の発信がかかりつけ定着に貢献します。内科・小児科の競合対策において最も重要なのは「家族全員がかかりつけとして通える体制」の整備です。
保険皮膚科としての競合対策として、①アトピー・乾癬・ニキビなどの専門疾患への特化(専門性差別化)、②Web予約・LINE予約の整備(特に若年層向け)、③Instagram活用による院長の専門性発信が有効です。整形外科では、リハビリテーションの充実・スポーツ整形の特化・エコーを使った精密診察のアピールが競合との差別化に効果的です。また、整形外科では「待ち時間の長さ」が最大の不満点になりやすいため、予約システムの導入が競合との大きな差別化ポイントになります。
美容皮膚科・美容外科・AGAクリニックなど自由診療中心のクリニックでは、競合増加による価格競争が最大のリスクです。価格競争に巻き込まれないための差別化として、①院長の専門資格・実績・技術のブランディング、②施術前後のカウンセリング・アフターフォローの充実、③リピート促進の仕組み(コース・定期メンテナンスプランの整備)、④SNS・ホームページでの専門性訴求(ガイドライン準拠で)が重要です。「競合より安い」という訴求はブランド価値の低下につながるため、「競合より信頼できる・安心できる」という軸での差別化を徹底することが長期的な競合対策になります。
| 診療科 | 競合増加時の主なリスク | 優先すべき差別化策 |
|---|---|---|
| 内科 | 慢性疾患患者の他院転院、新患の競合流入 | かかりつけ機能強化・複数科対応・在宅医療対応 |
| 小児科 | 近隣小児科の増加による新患の分散 | 乳幼児健診充実・予防接種リマインド・SNS発信 |
| 皮膚科 | 美容皮膚科・保険皮膚科の増加 | 専門疾患特化・Web予約整備・Instagram運用 |
| 整形外科 | 待ち時間問題・リハビリ競合の増加 | 予約システム導入・スポーツ整形特化・エコー活用 |
| 自由診療系 | 価格競争・新規参入の増加 | 院長ブランディング・カウンセリング充実・リピート施策 |
クリニック専門のマーケティング支援会社に依頼することで、①競合分析と差別化ポイントの客観的な評価、②MEO・SEO・Web広告を統合したデジタル集患戦略の設計と実行、③月次でのKPI管理(新患数・GBP評価・口コミ件数等)とPDCAの実施、④医療広告ガイドライン準拠の確認が可能になります。支援会社を選ぶ際は、①クリニック・医療機関の支援実績があるか、②医療広告ガイドラインを熟知しているか、③競合分析を基にした自院固有の差別化戦略を提案できるか、の3点を確認することを推奨します。
あらゆる対策を講じても競合との差が縮まらず、経営の改善が見込めない場合には、M&A(医院承継・売却)という選択肢も視野に入れることも一つの経営判断です。特に、開業から10〜20年が経過し院長が高齢になってきた段階で、競合増加によって収益が悪化している場合は、自院の価値が高いうちに承継を検討することが、地域医療の継続と自身の老後資産形成のためにも有効な判断になる場合があります。M&A・承継は経営状況が良好なうちから選択肢として持っておくことが重要です。
専門家との連携によって競合対策を加速させる方法については以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。
自由診療クリニックのコンサルティング完全ガイド|経営課題を解決し成長を加速させる「正しいコンサルの使い方」
クリニックの競合が増えた時に最も重要なのは、「気づいた段階で素早く動き始めること」です。競合増加による患者流出はじわじわと進むため、「まだ大丈夫」という判断が対策の遅れにつながります。まず現状を数値で把握し、競合を徹底分析した上で、自院の差別化ポイントを再定義して全チャネルで発信することが、競合増加時代を生き抜く基本戦略です。
差別化軸として、専門性の深化・利便性の向上・患者体験の質向上・かかりつけ機能の強化・自由診療の導入という5つのアプローチを、自院の状況と優先度に合わせて実行することが有効です。また、MEO対策(Googleマップ)・ホームページSEO・口コミ獲得・SNS運用というデジタルマーケティングの強化が、競合増加時代の集患基盤として不可欠になっています。
競合対策は「一度やれば終わり」ではなく、地域の競合状況を継続的にモニタリングしながら自院の戦略をアップデートし続けることが重要です。競合が増えた現実を直視し、今日から動き始めることが、選ばれ続けるクリニックへの確実な一歩です。
弁護士。京都大学経済学部卒業、京都大学経営管理大学院修了(MBA)
旧司法試験合格、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。独立行政法人中小企業基盤整備機構では国際化支援アドバイザーとして活動。
㈱Camphor Tree において、医療分野・税理士など専門サービス業における、マーケティング・ブランディング・HP/LP 制作・SEO・コンテンツ設計など、集客から売上につながる戦略設計・実行支援を行う。