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「受診者数を増やしたいが、何から手をつければよいか分からない」「新規集客の施策を試したが費用対効果が実感できない」「近くに新しいクリニックが開業してから受診者が減った気がする」——こうした悩みは、人間ドックを運営する施設に広く共通する課題です。
受診者数を増やすための方向性は大きく3つあります。①新規受診者の獲得、②受診単価の向上(オプション提案)、③既存受診者のリピート促進——この3軸を同時に動かすことで、はじめて受診者数と収益が安定的に伸びていきます。どれか一軸だけを強化しても、他の数字が足を引っ張り、経営的な改善につながりにくくなります。
本記事では、今すぐ実行できる具体的な施策を軸に、人間ドックの受診者数を着実に増やす実践的な方法を解説します。大手健診センターとの競合対策、近隣クリニックへの差別化、オプション検査による単価向上、リピーター育成まで、受診者増加に直結する施策を体系的にご紹介します。個人経営クリニックの院長から健診センターの事務長・経営企画担当者まで、すぐに動ける内容でまとめました。
多くの施設で受診者数が伸び悩む最大の理由は、「施設の存在を知らないから受診されていない」という認知不足です。厚生労働省の国民生活基礎調査によると、人間ドックを受けない理由として男女ともに「心配なときはいつでも医療機関を受診できるから」「時間がとれなかったから」が上位に挙がっています。しかしその背景には、「そもそも自分が受診できる近隣の施設を知らない」という潜在的な認知不足が存在します。Googleマップや検索で上位に表示されていない施設は、受診を検討している方の視野に入りません。「見つけてもらえる状態を作ること」が受診者増加の第一歩です。
施設を知ってはいても、「なぜここを選ぶのか」が伝わらなければ他施設に流れてしまいます。近隣に複数の施設がある場合、受診者はWebサイトや口コミを比較して選びます。「どの施設も似たような内容に見える」という状態では、費用が安い施設・予約が取りやすい施設・名の知れた大手が選ばれやすくなります。「この施設だからこそ受けたい」という理由を作ることが、価格競争から脱して安定した受診者を獲得する鍵です。
一度受診した方が翌年も来てくれるかどうかは、受診後の体験と接点設計に左右されます。「また来年もここで受けよう」と自然に思っていただける施設づくりができていなければ、毎年新規集客に多くのコストをかけ続けることになります。受診者1人のLTV(顧客生涯価値)を高めることが、長期的なコスト効率の改善につながります。以下は受診しない理由とその対応策の整理です。
| 受診しない主な理由 | 主な対象層 | 施設側の効果的な対応策 |
|---|---|---|
| 時間がとれない | 30〜50代ビジネスパーソン | 半日コース・早朝・土日対応の整備とWeb上での明示 |
| 費用が高そう | 20〜40代・女性 | 健保補助後の自己負担額をWebやSNSで具体的に発信 |
| どの施設がいいか分からない | 初回受診検討者 | MEO強化・ポータルサイト掲載・口コミ数の充実 |
| 必要性を感じていない | 若い世代・健康に自信のある方 | 年代別に受診するメリットをブログ・SNSで継続発信 |
| 一度受けたからもういい | 過去受診者 | リマインド配信・翌年受診案内・受診後フォローの設計 |
現在Googleビジネスプロフィールに登録していない場合は、今すぐ登録することが最優先です。登録済みの場合も、以下の4点を確認・整備しましょう。①施設名・住所・電話番号・営業時間・診療科目を正確に入力する。②施設の外観・受付・検査室・スタッフの写真を10枚以上アップロードする(雰囲気の「見える化」が予約率に直結します)。③Googleの質問・回答機能を活用して「予約方法は?」「費用の目安は?」などのFAQを事前に掲載する。④受診後にGoogleレビューをお願いする声がけ・カードの配布を徹底する(レビュー件数は信頼性の代理指標になります)。
MEO対策は月次の定期メンテナンスが重要です。写真の更新や投稿機能の活用(健診シーズンの案内など)を継続することで、検索表示順位の維持・向上が期待できます。Googleマップは「今いる場所の近く」でも上位表示されるため、アクセスの良さをアピールできるMEOは、大手健診センターの大規模広告予算に対抗できるコスト効率の高い施策でもあります。
WebサイトやLPに訪問した受診者が「予約しよう」と思った瞬間に迷わず予約に進める動線が作れているかを確認しましょう。予約ボタンが分かりにくい、スマートフォンでの表示が崩れている、予約フォームの入力項目が多すぎて離脱される——こうした問題が受診者数の増加を阻んでいるケースは少なくありません。改善の4つのポイントは、①スマートフォンのファーストビューに予約ボタンを配置する、②「ご予約はこちら」ボタンの配色を目立つカラー(濃いオレンジ・緑系)にする、③Web予約フォームの入力項目を最小限(氏名・電話番号・希望日・希望コース)に絞る、④電話番号をタップで発信できるようにして電話予約のハードルを下げる、の4点です。
受診をためらう理由として「費用がかかる」「時間がない」「何を受ければいいか分からない」が上位に挙がります。これらの不安や疑問に先回りして答えるコンテンツを発信することが、受診への心理的ハードルを下げます。具体的には「健保組合の補助を使えば自己負担額はどのくらいになるか」「半日で受診できる日帰りコースがある」「年代・性別別のおすすめ検査項目」などをブログ・SNS・FAQページで発信します。「費用が高そう」という思い込みを具体的な情報で解消するコンテンツは、問い合わせ数と予約転換率の改善に直結します。
「EPARK人間ドック」「マーソ(MRSO)」などの人間ドック比較・予約ポータルサイトへの掲載は、自施設のWebだけでは届かない受診者層にアプローチできる有効な施策です。ポータルサイト経由の受診には手数料が発生しますが、自施設のSEO・MEO強化と並行して活用することで、集客の間口を広げる効果があります。掲載施設の情報(写真・コース説明・口コミ)を充実させることが、ポータルサイト内での比較選択で選ばれる確率を高めます。
人間ドックの新規受診者をWebで獲得する具体的な手法については以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。
人間ドックのwebマーケティング完全ガイド | 検索で選ばれる人間ドックのデジタルマーケティング戦略
オプション検査の提案は「売り込み」ではなく、受診者の健康管理に役立つ情報提供です。年齢・性別・家族歴に応じた適切なオプションを提案することで、受診者は「自分に必要な検査を受けられた」という満足感を得ることができます。施設側は受診単価の向上につながります。オプション検査を提案しない最大の理由として「断られそうで案内しにくい」というスタッフ心理があります。しかし「お伝えする機会がなかったために受診者が必要な検査を受けられなかった」というケースを防ぐためにも、仕組みとして提案できる体制を整えることが重要です。
| 対象 | 推奨オプション検査の例 | 提案のポイント |
|---|---|---|
| 30代 男性 | 腹部エコー・ピロリ菌検査・肝機能強化 | 生活習慣病の予防意識が高まる年代。「今のうちに把握を」と訴求 |
| 40代 男性 | 腫瘍マーカー・PSA(前立腺)・心臓超音波 | 管理職になりがちな世代。「ご家族のためにも」というメッセージが刺さる |
| 50代 男性 | 脳ドック(頭部MRI/MRA)・動脈硬化検査 | 脳疾患・心疾患リスクが高まる年代。費用対効果の説明を丁寧に |
| 30〜40代 女性 | 乳房エコー・子宮頸がん検査・骨密度 | 婦人科系への関心が高い年代。女性スタッフからの案内が効果的 |
| 50代 女性 | マンモグラフィ・骨密度・甲状腺エコー | 更年期前後の変化が気になる年代。継続受診に結びつけやすい |
「本日の基本コースに加えて、○○の検査も追加いただけます。○○代の方にご検討いただくことが多いのですが、いかがでしょうか?」というシンプルな1〜2文のトークスクリプトを整備します。全スタッフが同じ案内ができる体制を作ることで、提案の質が属人化せず、オプション提案率が安定します。予約確認メールや当日受付票に「年代別おすすめ追加検査」の一覧を掲載する方法も、スタッフの負担を増やさずにオプション認知率を高める効果的なアプローチです。
まず近隣で同様のサービスを提供しているクリニック・施設をGoogleマップで調べ、①コースラインナップ、②費用帯、③Web予約の可否、④クチコミの傾向(不満点・評価点)、⑤アクセスの利便性を比較します。競合のレビューで「待ち時間が長い」「説明が少なかった」という不満が多い場合、それを自施設の強みとして前面に出す戦略が有効です。「競合が弱い部分に自施設の強みがある」というポジショニングは、差別化の最も基本的な設計です。
競合調査の結果をもとに「自施設がなぜ選ばれるべきか」を言語化します。「土日も対応しているため仕事が忙しい方も受診しやすい」「検査後に医師が個別に結果をご説明するため数値の意味が分かりやすい」「女性スタッフが対応する時間帯があるため女性の方が安心して受診できる」などが具体的な例です。施設側には当たり前の特徴でも、受診者にとっては選ぶ理由になります。
Googleビジネスプロフィールの紹介欄、WebサイトのTOPページ、SNSのプロフィールに、自施設の強みを言葉にして具体的に記載することが大切です。「人間ドックを専門に実施しており、多くの受診実績があります」「消化器内科専門医が在籍し、胃・腸の検査について詳しく相談できます」「女性専用の受診時間帯を設けています」——こうした情報を明示することで、「なんとなく近いから」ではなく「この施設だから受けたい」という指名受診につながります。競合施設が明示していない情報を先に発信するだけでも、比較選択において優位に立てます。
チャネル設計や季節別の集客アクションで競合に差をつける方法については以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。
人間ドックの集客戦略を体系化するチャネル設計と季節別アクションで受診者を増やす方法
日本健診センターをはじめとする大手健診専門機関の強みは、ブランド認知・大量処理能力・低価格コースの提供です。この土俵で中小規模の施設が正面から競合することは得策ではありません。大手の弱みは、受診者一人ひとりへの個別対応の難しさ・地域密着感の薄さ・担当が変わりやすいことです。中小規模の施設はこの弱みの裏にある「丁寧さ・密着感・継続性」を強みとして確立することが、差別化の核心です。
「毎年同じ施設で、同じスタッフ・医師に診てもらえる安心感」「前回の数値と比較しながら健康状態の変化を継続確認できる」という「かかりつけ健診」としての価値提案が有効です。大手には提供しにくいこの継続的な関係性こそが、中小規模施設の最大の競合優位性です。この価値をWebサイト・SNS・パンフレットで一貫して発信することで、独自のポジションが確立されます。基本コース・女性向けコース・プレミアムコースという3段階のコース設計で「選びやすさ」を整え、料金をWebサイトに明示することも受診者の安心感につながります。
受診後の体験が翌年のリピート率を決定的に左右します。受診当日の「結果の説明が丁寧だった」「スタッフの対応が親切だった」「施設が清潔で快適だった」という満足感は、「来年もここで受けよう」という気持ちの源になります。さらに受診後1〜2週間以内に「結果のご確認はお済みでしょうか」というフォローメール・ハガキを送付することで、受診者との接点を維持します。「数値に気になる点がある場合はいつでもご相談ください」という一言が施設への信頼感を高め、次回受診の動機になります。
受診から10〜11か月後を目安に「今年もご受診のご案内」をメールまたはハガキで送付します。このリマインドの実施有無でリピート率に大きな差が出ます。メールシステムや予約管理ツールを活用し、受診日から11か月後に自動でリマインドが送られる仕組みを作ることが理想です。繁忙期(4〜6月、10〜12月)の1〜2か月前に配信のタイミングを設定することで、早期予約獲得にもつながります。「前回の気になる数値のご確認も兼ねて、今年もぜひご受診ください」という個別感のある文面が効果的です。
満足度の高いリピーターは「家族にも受けさせたい」「知人にも勧めたい」という気持ちになりやすいです。受診後のフォローレターに「ご家族のご受診もご案内できます。同日ご受診も可能です」という一文を入れるだけでも、家族受診の予約につながるケースがあります。紹介プログラムを整備する場合は、過度な割引や謝礼が医療法・医療広告ガイドラインに抵触する場合があるため、専門家(弁護士・社労士など)への事前確認をおすすめします。
リピーターのLTV最大化を含む人間ドックのマーケティング戦略全体像については以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。
人間ドックのマーケティング戦略を体系化 | 選ばれる健診施設のマーケティング戦略大全
施策を実行し続けるためには、「誰が・何を・いつまでに行うか」を役割として明確にすることが重要です。院長や事務長が全てを担う体制では持続しにくいため、スタッフ1名に集客担当(MEO管理・SNS投稿・リマインド配信・ポータルサイト管理など)を割り当て、月次で進捗を確認する仕組みを作りましょう。担当者の月次目標として「MEOの写真を月1回更新する」「SNSを週2回投稿する」「リマインド配信を月次で実行する」などの具体的なアクション目標を設定することが、施策の継続性を担保します。
月初に「先月の予約数・受診単価・チャネル別実績」を確認し、今月の重点施策を決定する月次ミーティング(15〜30分程度)を定例化します。「施策を実施した→数字がどう変わったか」を毎月確認することで、効果のある施策を継続し、効果の薄い施策を改善するPDCAサイクルが回り始めます。KPI(月間予約数・オプション提案率・リピート率など)を毎月記録・共有することで、チーム全体が集客を「自分ごと」として捉える文化が生まれます。
施策を継続させる体制づくりや売上改善の全体設計については以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。
クリニックの自由診療売上が上がらない原因と解決策|新患・単価・リピートを同時に伸ばす実践戦略
人間ドックの受診者数を増やすためには、「新規受診者の獲得」「受診単価の向上(オプション提案)」「既存受診者のリピート促進」の3軸を同時に動かすことが重要です。MEO対策・Web予約動線の整備から始め、オプション検査の提案スクリプトを整備し、受診後フォローとリマインド配信で翌年受診につなげる——このサイクルを仕組みとして確立することが、受診者数増加の王道です。
大手健診センターや近隣クリニックとの競合においては、「スピードや規模・価格」ではなく「丁寧な個別対応・かかりつけ健診としての継続的な関係性」という独自ポジションを確立することが、価格競争に巻き込まれない強みを生み出します。施策を継続させるためには、集客担当の役割を明確にし、月次の進捗管理を仕組み化することが欠かせません。
まず今日できることから1つ実行してみましょう。Googleビジネスプロフィールの写真を追加する、受診後にGoogleレビューをお願いするカードを作成する、翌年リマインドのメールテンプレートを1通書く——小さな一歩の積み重ねが、半年後・1年後の受診者数の違いにつながります。施策の設計・実行・PDCAを繰り返すことで、貴施設ならではの「受診者が増え続ける仕組み」が完成していきます。
弁護士。京都大学経済学部卒業、京都大学経営管理大学院修了(MBA)
旧司法試験合格、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。独立行政法人中小企業基盤整備機構では国際化支援アドバイザーとして活動。
㈱Camphor Tree において、医療分野・税理士など専門サービス業における、マーケティング・ブランディング・HP/LP 制作・SEO・コンテンツ設計など、集客から売上につながる戦略設計・実行支援を行う。