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在宅医療・訪問診療クリニックの開業を検討しているものの、「何から手を付ければよいかわからない」「開業資金はどのくらい必要なのか」「患者をどうやって集めれば良いのか分からない」とお悩みではないでしょうか。在宅医療は一般外来クリニックとは開業プロセスが大きく異なるため、専門的な知識と計画的な準備が不可欠です。本記事では、在宅医療・訪問診療の開業に必要な基礎知識から、具体的なスケジュール・資金計画・患者獲得戦略・IT活用まで、開業成功に向けたすべてのステップを体系的に解説します。これから開業を目指す医師の方はもちろん、既存クリニックへの訪問診療導入を検討している方にも役立つ情報を網羅しています。
在宅医療とは、医師や看護師などの医療従事者が患者の自宅・施設を訪問して医療を提供するサービスの総称です。その中でも「訪問診療」と「往診」は混同されやすいですが、両者には明確な違いがあります。訪問診療とは、医師が計画的・定期的に患者宅を訪問し、継続的な医療管理を行うものです。一般的に月2〜4回の訪問が標準とされており、診療計画書を作成した上で保険請求を行います。
一方、往診とは患者の急な体調変化や緊急時に医師が臨時で訪問するものです。往診は計画外の対応であるため、突発的な需要に迅速に対応できる体制が求められます。在宅医療クリニックを開業する際は、訪問診療を主軸としながら、24時間の往診対応体制を整えることが在宅療養支援診療所の届出要件となっています。
💡 重要ポイント:訪問診療と往診の違い
訪問診療=計画的・定期的な医師の訪問(月2〜4回が標準)。診療計画に基づき継続管理を行います。往診=急変時の緊急臨時訪問。24時間対応体制の整備が在宅療養支援診療所の届出要件となっています。
在宅医療の主な対象患者は、通院が困難な高齢者・要介護者、末期がん・難病・慢性疾患の患者、退院後に自宅療養を希望する患者などです。日本は2025年に団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となる「2025年問題」を迎え、在宅医療の需要は急激に拡大しています。厚生労働省の推進する病床削減・入院期間短縮の方針も相まって、退院後の在宅医療を担う訪問診療医へのニーズは一層高まっています。
また、「住み慣れた地域・自宅で療養したい」という患者・家族のニーズも年々増加しており、在宅での看取り対応や緩和ケアへの期待も高まっています。こうした社会的背景から、在宅医療・訪問診療クリニックの開業は、医師にとって大きなビジネスチャンスであると同時に、地域医療への貢献という大きな意義も持っています。
訪問診療クリニックとして高い診療報酬を算定するためには、「在宅療養支援診療所(在支診)」の届出が必要です。在支診には主に3つのタイプがあります。
| 種別 | 主な要件 | 特徴 |
|---|---|---|
| 一般の在支診 | 24時間対応体制、緊急往診・看取り実績あり | 最も一般的なタイプ。訪問診療を中心に取り組む診療所 |
| 機能強化型在支診(単独型) | 常勤医3名以上、年間緊急往診10件以上、看取り4件以上 | 高い診療報酬算定が可能。中規模以上のクリニック向け |
| 機能強化型在支診(連携型) | 複数の在支診・在支病が連携して要件を充足 | 小規模クリニックでも機能強化型の要件を満たせる |
開業当初から機能強化型を目指す場合は、近隣の在支診や訪問看護ステーションとの連携体制を早期に構築することが重要です。まずは一般の在支診として届け出て、実績を積みながら機能強化型への移行を目指すケースも多く見られます。
開業を成功させるためには、十分なリードタイムを確保した計画的な準備が不可欠です。開業12ヶ月前〜6ヶ月前の時期は、開業の根幹を決める重要なフェーズです。この期間に行うべき主な作業は以下の通りです。
| 時期 | 主なタスク |
|---|---|
| 12ヶ月前 | コンセプト・診療方針の策定、事業計画書の作成、開業形態の検討(独立・継承・FC) |
| 10〜11ヶ月前 | 開業エリアの選定と診療圏調査、物件探し開始、開業支援会社・コンサルへの相談 |
| 8〜9ヶ月前 | 法人設立の検討(医療法人か個人開業か)、金融機関への融資相談・事業計画書提出 |
| 6〜7ヶ月前 | 物件契約・内装設計の確定、医療機器・車両の選定・発注、スタッフ採用活動開始 |
開業6ヶ月前からは、各種届出・許認可手続きが本格化します。並行して進めるべき準備事項を整理しておきましょう。
| 時期 | 主なタスク |
|---|---|
| 5〜6ヶ月前 | 保険医療機関指定申請の準備、在宅療養支援診療所の届出書類の準備 |
| 3〜4ヶ月前 | 電子カルテ・訪問診療システムの導入、スタッフ研修開始、連携先へのあいさつ回り |
| 1〜2ヶ月前 | ホームページ・SEO対策の準備、開業案内(紹介先への案内状の送付)、訪問用車両の整備 |
| 開業直前 | 保険医療機関指定の確認、スタッフへの最終研修・シミュレーション、診療開始の告知 |
開業後の最初の3〜6ヶ月は、患者数の増加と運営の安定化が最重要課題となります。訪問診療クリニックの収益は患者数に直結するため、この期間にいかに患者獲得ルートを確立できるかが、中長期的な経営の安定を左右します。
一般的に訪問診療クリニックの損益分岐点は月間患者数50〜80人程度とされています。開業後3ヶ月を目安に月間30〜40人、6ヶ月で50〜60人を確保できれば、経営は安定軌道に乗りやすくなります。地域の医療機関・介護事業者との連携強化と、継続的なアウトリーチ活動が鍵です。
💡 重要ポイント:開業後の患者獲得目標
開業後3ヶ月:月間30〜40人を目指す。開業後6ヶ月:月間50〜60人(損益分岐点クリア)を目指す。開業後1年:月間80〜100人以上で安定経営を実現できます。
ゼロからの独立開業は、診療方針・経営方針を完全に自分でコントロールできる、最大の自由度を持つ開業形態です。自院のコンセプトや理念を明確に打ち出せるため、地域に根ざした独自の在宅医療を構築したい医師に向いています。自院ブランドの構築や地域でのポジショニングも自由に設計できます。
一方でデメリットとしては、開業準備から患者獲得まで、すべての責任とリスクを自身で負う必要がある点が挙げられます。開業初期は収益が安定しないため、十分な運転資金の確保と綿密な資金計画が不可欠です。経験豊富な開業支援会社やコンサルタントと連携することで、リスクを大幅に軽減することができます。
既存の訪問診療クリニックを引き継ぐ形での開業も有力な選択肢です。継承の最大のメリットは、既存の患者基盤・スタッフ・設備を引き継げることです。ゼロから患者を集める必要がなく、開業直後から安定した診療収入が見込めるため、経営リスクを大幅に低減できます。
近年は、院長の高齢化や後継者不足を背景に、在宅医療クリニックのM&A・継承案件が増加しています。医療機関専門のM&Aマッチングサービスを活用することで、希望するエリアや規模の案件を見つけやすくなっています。のれん代(権利金)の支払いや、前院長の診療スタイルとのギャップについては事前に十分確認することが重要です。
在宅医療専門のフランチャイズや医療グループへの参画は、独自開業よりもリスクを抑えつつ、ブランド力や既存ノウハウを活用できる形態です。本部から提供されるオペレーションマニュアル・ITシステム・研修体制を活用できるため、在宅医療の経験が少ない医師でも比較的スムーズに立ち上げができます。
デメリットとしては、加盟金・ロイヤリティの支払いが発生すること、診療方針や運営方針の自由度がある程度制限されることが挙げられます。契約内容を十分に確認し、自分の目指す在宅医療の姿と合致しているかを慎重に検討することが重要です。
| 形態 | 初期費用目安 | 患者獲得 | 自由度 | 向いている医師像 |
|---|---|---|---|---|
| 独立開業 | 1,500〜2,000万円 | 自力で開拓 | 高い | 独自の在宅医療を実現したい |
| 継承・M&A | のれん代含め変動 | 既存患者引継ぎ | 中程度 | 早期安定経営を優先したい |
| フランチャイズ | 加盟金+開業費 | 本部サポートあり | 低〜中 | 在宅医療未経験で安心感を求める |
| グループ参画 | 比較的低め | グループ内紹介 | 中程度 | 仲間と連携しながら開業したい |
在宅医療・訪問診療の開業形態や具体的な開業準備の流れについては以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。
在宅医療・訪問診療クリニックの開業完全ガイド|費用・手続き・集患戦略を徹底解説
訪問診療クリニックを開業し保険診療を行うためには、「保険医療機関」としての指定を受けることが必要です。保険医療機関の指定申請は、クリニックの所在地を管轄する地方厚生局(北海道・東北・関東信越・東海北陸・近畿・中国四国・九州の各事務所)に対して行います。
申請のタイミングは開設(開業)予定日の概ね1ヶ月前が目安です。申請に必要な主な書類は、保険医療機関指定申請書、診療所開設届のコピー、管理者(院長)の保険医登録証のコピー、建物の平面図などです。書類不備があると審査に時間がかかるため、開業支援会社や行政書士の支援を受けながら準備を進めることをおすすめします。
一般の在宅療養支援診療所(在支診)として届け出るためには、以下の主要要件を満たす必要があります。
| 要件項目 | 内容 |
|---|---|
| 24時間連絡・往診体制 | 24時間365日、患者・家族からの連絡を受けられる体制を整備すること |
| 緊急往診体制 | 緊急時に往診できる体制があること(他の医療機関との連携による対応も可) |
| 看取り対応 | 在宅での看取りに対応できる体制があること |
| 連絡先の公表 | 24時間対応可能な連絡先を地域の関係者・患者に公表していること |
| 担当医師の配置 | 在宅診療を担当する医師(保険医)を1名以上配置していること |
より高い診療報酬を算定できる「機能強化型在宅療養支援診療所」には、単独型と連携型の2種類があります。単独型の場合、常勤医師3名以上の配置、年間緊急往診10件以上、年間看取り4件以上などの要件を単独で満たす必要があります。
連携型の場合は、複数の在宅療養支援診療所や在宅療養支援病院が連携して要件を充足することが認められています。開業当初は常勤医師が1名であっても、連携型として機能強化型を届け出ることで、高い診療報酬を早期から算定できる可能性があります。地域の在支診との連携関係を構築することが重要です。
⚠️ 注意事項:届出のタイミング
在支診の届出は保険医療機関の指定申請とは別に行います。算定開始は届出の翌月からとなる点に注意が必要です。開業前から届出準備を進め、開業と同時に届出が受理されるよう段取りを組みましょう。
訪問診療クリニックの開業費用は、一般的な外来クリニックと比べて大幅に低く抑えられるのが特徴です。外来診療がないため広いテナントや高額な医療機器が不要であり、一般内科クリニックの開業費用目安6,000万円と比較して、訪問診療専門クリニックは1,500万〜2,000万円程度が目安とされています。
| 費用項目 | 目安金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 物件取得費(敷金・礼金) | 100〜300万円 | 小規模オフィスで可。15〜30坪が目安 |
| 内装工事費 | 100〜200万円 | 診察室・事務スペース・倉庫等の整備 |
| 医療機器・備品 | 200〜400万円 | ポータブル超音波、心電計、AED等 |
| 訪問用車両 | 100〜200万円 | 軽自動車2〜3台が一般的 |
| 電子カルテ・ITシステム | 100〜200万円 | 訪問診療専用カルテの導入 |
| 採用・研修費 | 50〜100万円 | スタッフ採用・研修コスト |
| 広告・HP制作 | 30〜80万円 | Web集患対策を含む |
| 運転資金(6ヶ月分) | 300〜500万円 | 開業後の安定化期間をカバー |
訪問診療クリニックの収益は、主に診療報酬(訪問診療料・在宅時医学総合管理料など)によって構成されます。患者1人あたり月約5〜8万円の収益(訪問診療料+在宅時医学総合管理料の合計)を見込むと、月固定費(家賃・人件費・車両維持費など)が150〜200万円の場合、損益分岐点は概ね25〜40人程度となります。
ただし、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などの施設への訪問診療を中心とする場合は、単一建物での算定となるため収益構造が異なります。施設受け持ち患者が増えると移動効率が高まり、少ない移動時間で多くの患者を診られるため、月間収益が大きく向上する可能性があります。事前に収益シミュレーションを複数パターンで試算することが重要です。
開業資金の調達には、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」や「医療貸付制度」が広く活用されています。日本政策金融公庫は医療機関の開業実績が豊富で、民間銀行よりも低金利・有利な条件での融資を受けやすい傾向があります。地方銀行・信用金庫も医療機関向けの開業融資メニューを用意している場合が多いため、複数の金融機関を比較検討することをおすすめします。
補助金・助成金については、国や都道府県の「地域医療介護総合確保基金」「へき地医療支援」関連の補助制度が活用できる場合があります。また、創業補助金(中小企業庁)が対象となるケースもあります。補助金は申請時期や要件が限定されているため、開業支援会社や行政書士と連携して最新情報を確認することが重要です。
💡 重要ポイント:資金調達の成功ポイント
開業資金の自己負担割合は総費用の20〜30%が目安です。日本政策金融公庫への申請では詳細な事業計画書が審査の鍵となります。補助金・助成金情報は地域によって異なるため、地元の商工会議所や開業支援会社を通じて最新情報を収集してください。
資金計画や収益構造の設計を含む経営戦略の全体像については以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。
在宅医療・訪問診療の経営戦略完全ガイド | 安定した収益基盤をつくる運営・集患・財務の実践ポイント
訪問診療の患者獲得において、最も重要な紹介元の一つが病院の地域連携室・医療ソーシャルワーカー(MSW)です。急性期病院では入院期間の短縮化が進んでおり、退院後の在宅医療を担う医師との連携ニーズが高まっています。開業前から地域の急性期病院の地域連携室に挨拶回りを行い、退院前カンファレンスへの積極的な参加を通じて信頼関係を構築することが重要です。
特に、退院前カンファレンスに訪問診療医として参加し、患者・家族・医療チームに対して在宅での診療方針を丁寧に説明できる体制を整えることが、患者獲得の大きな差別化要因となります。継続的な患者紹介を受けるためには、紹介後の診療情報提供書(返書)・フィードバックレポートをタイムリーに送付し、連携の質を高める努力が求められます。
在宅医療の患者紹介において、居宅介護支援事業所のケアマネジャー(介護支援専門員)との連携は非常に重要です。ケアマネジャーは要介護認定を受けた患者のケアプランを作成する立場にあり、訪問診療医の情報を日常的に患者・家族に提供しています。
開業後は地域の居宅介護支援事業所を個別に訪問し、自院の診療方針・専門領域・24時間対応体制を丁寧に説明することが大切です。患者の状態変化をケアマネジャーにタイムリーに報告する習慣を徹底することで、継続的な紹介関係が生まれます。訪問看護ステーションの看護師も重要な連携パートナーであり、日常的な連携体制を整えることで患者ケアの質と紹介獲得の両方を高めることができます。
在宅医療・訪問診療の集患においても、Webマーケティングの重要性は年々高まっています。特に介護が必要になり始めた患者の家族がインターネットで「○○市 訪問診療」「在宅医療 夜間対応」などと検索するケースが増加しており、SEO対策が施されたホームページは重要な集患ツールとなっています。
Googleビジネスプロフィール(旧Google マイビジネス)への登録・最適化も欠かせません。地域名と「訪問診療」「在宅医療」を組み合わせたキーワードでの検索結果に上位表示されることで、地域の患者・家族からの問い合わせを増やすことができます。また、医療従事者向けに専門領域・対応疾患・24時間体制の有無などをホームページに明示することで、ケアマネや医療機関からの紹介増加にもつながります。
訪問診療クリニックの開業時に最低限必要なスタッフ構成は、医師(院長)1名、看護師1〜2名、医療事務(レセプト担当)1名が一般的です。在宅医療は外来クリニックとは業務内容が大きく異なるため、在宅医療の経験や意欲を持つスタッフを採用することが重要です。
採用活動は開業6〜8ヶ月前から開始することをおすすめします。求人媒体は医師・看護師専門の求人サイトや医療従事者向けの転職エージェントを活用するとともに、地域の医療機関ネットワークや研修医時代の人脈も有効です。給与・待遇だけでなく、「在宅医療のやりがい」「チーム医療の雰囲気」を魅力として打ち出すことが採用成功の鍵です。
| 職種 | 主な業務 | 開業時の目安人数 |
|---|---|---|
| 医師(院長) | 訪問診療・往診・診療計画作成・医療機関連携対応 | 1名(非常勤含め2名体制が理想) |
| 看護師・准看護師 | 訪問看護・処置補助・オンコール対応 | 1〜2名 |
| 医療事務 | レセプト請求・書類作成・電話応対・訪問スケジュール管理 | 1名 |
在宅医療の質を高めるためには、医師・看護師だけでなく、訪問薬剤師・理学療法士・作業療法士・歯科医師・管理栄養士など多職種との連携が欠かせません。特に訪問薬剤師・訪問歯科・訪問リハビリとの連携は、患者の生活の質(QOL)向上に直結します。
開業前から地域の調剤薬局・歯科クリニック・訪問リハビリ事業所とのネットワークを構築しておくことで、開業後にスムーズな多職種連携が実現します。医療介護連携ツール(ICTプラットフォーム)を活用することで、多職種間の情報共有の効率を高め、ケアの質と連携先からの信頼感を同時に高めることができます。
在宅療養支援診療所の届出要件として、24時間365日の緊急連絡・往診対応体制が求められます。院長1名の体制では身体的・精神的な負担が大きいため、開業当初から持続可能なオンコール体制を設計することが重要です。
具体的な対応策として、非常勤医師の採用・シフト制の導入、近隣の在支診との連携による輪番制の活用などが考えられます。オンコール体制における医師の疲弊は離職・廃業の大きな原因となるため、早期からチームでの対応体制を整えることがクリニックの長期的な継続性を守ることにつながります。
⚠️ 注意事項:オンコール体制の構築
院長1人でのオンコール対応は身体的・精神的な疲弊を招き、長期的なクリニック運営の妨げになります。開業当初から非常勤医師の確保や近隣クリニックとの輪番制構築を検討してください。
患者獲得や多職種連携による紹介ネットワークの構築方法については以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。
在宅医療・訪問診療の集患方法を徹底解説|多職種連携からWeb戦略まで患者紹介を増やす実践ガイド
訪問診療クリニックの電子カルテには、一般外来クリニック向けの製品ではなく、訪問診療業務に最適化された専用製品の導入が推奨されます。訪問診療専用電子カルテの主な選定ポイントは、タブレット・スマートフォンでのモバイル対応、電波が届かない環境でのオフライン入力機能、訪問診療レセプトの自動計算・点検機能、介護連携記録の管理機能などです。
導入前に必ずデモを体験し、スタッフの操作習熟度・サポート体制・更新コストを総合的に評価した上で選定することをおすすめします。また、電子カルテと連動した訪問スケジュール管理や請求業務の効率化も、開業後の運営負担を左右する重要な要素です。
訪問診療クリニックでは、複数の患者宅・施設を1日に効率よく回るためのルート管理が経営効率に直結します。一般的なナビゲーションツールに加え、訪問診療・介護向けに特化したスケジュール・ルート最適化ツールを活用することで、1日の訪問件数を増やしながら医師の移動負担を軽減できます。
患者の居住エリアが広域に分散している場合や、複数の医師・看護師が訪問するチーム体制をとる場合は、スケジュール管理ツールの導入効果が特に大きくなります。訪問診療専用のスケジューラーは、患者の訪問頻度・特記事項・緊急連絡先なども一元管理できるため、スタッフ間の情報共有ツールとしても役立ちます。
在宅医療領域でも医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の活用が急速に進んでいます。特に注目されているのが、医療・介護多職種連携プラットフォームの活用です。「メディカルケアステーション(MCS)」などのツールを活用することで、医師・看護師・ケアマネジャー・薬剤師などが患者情報をリアルタイムで共有でき、ケアの質向上と業務効率化を同時に実現できます。
また、オンライン診療の活用も在宅医療の可能性を広げています。訪問診療の合間にオンライン診療を組み合わせることで、患者状態の観察頻度を高めながら、医師の移動時間を削減することが可能です。AI問診・音声入力カルテなどの新技術も積極的に導入し、医師・スタッフの業務負担を軽減することが、持続可能なクリニック経営に不可欠です。
在宅医療・訪問診療クリニックの開業支援を専門とする会社・コンサルタントは、開業プロセス全体をワンストップでサポートします。主なサービス内容には、事業計画策定・資金調達支援、診療圏調査・エリア分析、物件探し・内装設計サポート、各種届出・許認可申請代行、スタッフ採用支援、電子カルテ・ITシステム選定、開業後の経営コンサルティングなどが含まれます。
開業支援会社を活用することで、開業準備にかかる時間と労力を大幅に削減でき、開業後の経営リスクを低減できます。特に在宅医療は一般クリニックとは届出・診療報酬体系が大きく異なるため、在宅医療専門の支援実績を持つ会社を選ぶことが非常に重要です。
開業支援会社を選定する際には、以下のチェックポイントを基に比較・検討することをおすすめします。在宅医療・訪問診療クリニックの開業支援実績(件数・エリア・規模)、担当コンサルタントの専門性と在宅医療現場への理解度、開業後のアフターフォロー体制(経営支援・診療報酬改定対応など)、報酬体系の透明性(着手金・成功報酬・月額費用の明示)の4点が特に重要です。
| チェック項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 在宅医療の専門実績 | 訪問診療クリニックの開業支援件数・エリア・規模感が自身の計画と合致しているか |
| 担当者の専門性 | 在宅医療の診療報酬・届出制度・連携構築の実務を熟知しているか |
| 開業後フォロー | 開業後の経営支援・診療報酬改定対応・スタッフ採用支援まであるか |
| 料金体系の透明性 | 着手金・成功報酬・月次支援料など費用体系が明確に説明されているか |
| 実績医師への紹介 | 過去の支援医師への直接ヒアリングが可能か |
開業支援会社への費用は、支援内容・契約範囲によって大きく異なります。一般的な目安として、コンサルティング契約の場合は着手金50〜100万円+月額支援料10〜30万円(開業後1〜2年間)、フルサポート型(開業準備から開業後の経営安定化まで一括)の場合は総額200〜400万円程度となるケースが多いです。
この費用を「コスト」として見るのではなく、「開業の成功確率を高める投資」として評価することが重要です。専門知識を持つ支援会社を活用することで、届出ミス・資金計画の誤り・患者獲得の遅れなどによる損失を未然に防ぐことができます。開業後の経営安定化が3ヶ月早まるだけで、支援会社への投資額を上回るリターンが得られるケースも珍しくありません。また、最新の診療報酬改定に精通したコンサルタントによって、算定漏れや届出遅れによる機会損失を防ぐ効果も期待できます。
💡 重要ポイント:支援会社選びのポイント
在宅医療・訪問診療の開業支援実績が豊富で、開業後の経営フォローまでサポートしてくれる会社を選ぶことが開業成功の近道です。費用だけで判断せず、担当者との相性・専門性・実績を総合的に評価してください。
開業支援会社やコンサルタントの選び方・活用方法については以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。
在宅医療・訪問診療のコンサルとは|導入から運営改善まで専門家に相談すべき理由と選び方
在宅医療・訪問診療クリニックの開業は、一般外来クリニックとは異なる専門知識と準備が求められますが、少ない初期投資で高い収益性を実現できる魅力的なビジネスモデルです。成功の鍵は、①開業12ヶ月前からの計画的な準備、②在宅療養支援診療所の届出と診療報酬の最適活用、③病院・ケアマネ・訪問看護との強固な紹介ネットワークの構築、④ITを活用した効率的な運営体制の整備、⑤専門の開業支援会社・コンサルタントとの連携、の5点に集約されます。
在宅医療の需要は2025年問題を背景に今後も拡大が続き、社会的ニーズと経営的魅力の両方を兼ね備えた分野です。本記事で解説したステップを参考に、ぜひ計画的で着実な開業準備を進めてください。開業準備の過程で疑問点や不安がある場合は、在宅医療の開業支援に精通した専門家への相談を早めに行うことをおすすめします。
弁護士。京都大学経済学部卒業、京都大学経営管理大学院修了(MBA)
旧司法試験合格、最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。独立行政法人中小企業基盤整備機構では国際化支援アドバイザーとして活動。
㈱Camphor Tree において、医療分野・税理士など専門サービス業における、マーケティング・ブランディング・HP/LP 制作・SEO・コンテンツ設計など、集客から売上につながる戦略設計・実行支援を行う。